Kの思索(付録と補遺)

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「探偵はBARにいる3」を観た感想 BARいるシリーズ最高傑作の誕生!〜Kの思索(付録と補遺)vol.17〜

探偵はBARにいる3」を観てきました。結論から言うと、今年ベスト級でした。

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 探偵はBARにいるシリーズもついに3作目。監督は「あまちゃん」「サラリーマンNEO」等で有名な吉田照幸。脚本は「リーガルハイ」の古沢良太

 

 このシリーズに関して僕は1作目を劇場で観ており、そこそこ楽しんだほうだったのですが、2作目に関しては割と厳しい評価をつけてました。なので3作目を劇場に見に行くのは結構恐る恐るだったんですが、本当に観に行ってよかったです。

 

 この監督と脚本の組み合わせは結構危険だなと思っていて、両者とも「良い話」を描くとダメになるタイプなのですよ。彼らの特性は「皮肉な話」を描いたほうが活かされてるなぁというのが、これまでの作品から読み取れます。そして二人ともギャグセンスが良いので、ちょっとコメディ風に、皮肉な話を描く、というのが正解なわけです。今回の「探偵はBARにいる3」はまさに彼らの適性を活かしたつくりになっていました。

 

 まず主人公は大泉洋さん。北海道では超有名人だそうで、道外の人間からすると芸人?という印象ですが、本業は演者なのだそうです。大泉洋さんがこういうハードボイルドな演技が出来るというのは、知らなければかなり驚くと思います。この映画を見た後だとマジでイケメンにしか見えない(笑)。勿論「水曜どうでしょう」的な僕らがよく知るほうのちょっと抜けたイメージも主人公のキャラとして備えています。例えるならルパンですね。抜けてるんだけど、決めるところはバシッと決めてカッコいい。

 

 そして主人公の相棒役を演じるのは松田龍平さん。普段はどうしようもないけど、いざというときは非常に頼りになる相棒という役が本当に似合いますね。主人公のピンチを外からテキトーに眺めてる感じとか本当に最高です。「おまえふざけんなよ助けろよバカヤロー!」「えー」みたいな掛け合いが非常に楽しい。このキャラクターは完全に「まほろ駅前多田便利軒」の行天春彦ですよね。まほろが好きな人はこのシリーズも好きになることでしょう。瑛太まで大泉洋に見えてくる始末・・・笑

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 そして今回のヒロインであり、ベスト演者賞でもあるのは北川景子さん。本作品の北川さんは本当に素晴らしかった。間違いなく今後、代表作として語られていくことでしょう。さっき主人公がルパンと書きましたけど、北川さん演じるヒロインは峰不二子ですね。こう考えると今回の作品は色々とルパンっぽいところが見えてきますね~・・・ただOPクレジットは完全に「古畑任三郎」のオマージュですが。

 

 ルパンや古畑任三郎といえば、コメディ要素がありつつ、シリアスなところはきっちりと決め、テーマ性もある傑作です。しかし彼らにオマージュを捧げた本作が傑作かと言われると、正直微妙なところがあります。大抵このような作品は、シリアスとコメディがキッチリ区別されてないと感情が訳の分からないことになるもの。シリアスで貫かれるべき場面にコメディ要素があると「なにふざけてんの?」ってイライラしますよね。感情の「流れ」も止まってしまう。本作もそのラインは非常に危うく、ヒヤヒヤするところがありました(とはいえほとんどのギャグで爆笑してましたが)。また作品として説明過剰なところもあって、「もうその回想シーンみたよ」と思ったり「それ、いちいちセリフで言わなくても伝わってるよ」と思ってしまって、上手く感情が乗り切れない部分もありました。しかしこれらのことは僕にとっては些細なことなのです。何故なら前述したように、北川景子さん演じるヒロイン像が僕の琴線に触れまくったからです。

 

 彼女はいわゆる「身体」で金を稼ぐ絶望系ヒロインです。「死んでもいい、死にたい」という感情を通り越し「生きるのも死ぬのもどうでもいい」という境地に達しています。それが主人公との出会いにより、運命が捻れていきます。

 

 ネタバレを避けるためにあまり説明するのは避けますが、本作品はこのキャラクターが「何を失って、何を手に入れるか」ひいては「何のために生きるか」の物語となっています。ポスターのキャッチコピーの通り「命を燃やすもの」があるのか。そもそも自分に何の価値も置いてない人間が、どうして命を燃やすことが出来るのか・・・ここの描き方と結論が非常に美しく、僕は思わず号泣メーンでしたよ。

 

 あとどうでもいいですけどめちゃくちゃ美人ですよね。ほぼすっぴんに近い薄化粧の北川景子さんが見れます。堕天使です。本当に薄幸の美少女という感じで思わず助けたくなりますし、そもそもあんな「助けて」は卑怯ですからね。あそこまで「これは断れねぇ」と思ったのはホワイトアルバム2で小木曽雪菜に「避けても…いいんだよ?」とキッスを迫られたとき以来です(なんのことやら)。

 

 敵キャラのボスも良かったですね。リリーフランキー演じるヤクザなんですが、これが本当に嫌な感じで、せっかくの北海道の美味しい高級食材が全然美味しく食べれなくなるシーンとか大好きですね。飲み会の席で上司の説教を食らいながらどんどん食えと言われるアレを10倍嫌にした感じです。あと殺しに癖があるというアイデアも良かったですね。

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 アクションシーンも上手く出来ていました。人によっては好き嫌いが分かれるかもしれない映像表現ですが、僕は好きですね。大泉洋さんも松田龍平さんも、ジャッキーチェンやブルースリーのような肉体派ではないので、攻撃に重さという説得力を持たせるにはアレくらいが気持ちいいですね。あとラスボス戦の決着にも合理的な理由があるのが良いですね。絶対的実力差のある敵に立ち向かうために努力する。ただ、やはり努力だけで勝てるほど甘くはない。ではどうするか。戦い方を工夫するしかないですね。この工夫がバッチリ作品の世界観にハマってました。

 

 そしてこの作品、スポンサーがほぼ札幌の企業なので、やたらと札幌感を押し出してきます。なんなら市長でてますからね(本物)。札幌には結構遊びに行くので、サッポロファクトリーでのイベントや、ススキノ交差点、ノルベサの観覧車などなど、馴染みあるものがバンバン出てきます。住民であればなお楽しめますね。

 

 ということで、年の瀬に今年ベスト級の作品と出会ってしまいました。演者の大泉洋を知るには最もよい映画ですし、札幌住民ならこの映画をみるのはもはや義務でしょう。真冬のススキノがススキノ感たっぷりに描かれていて美しいですし、制作人の愛を感じます。ぜひ劇場で鑑賞してみてください!