Kの思索(付録と補遺)

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JINRO presents 岡崎体育ホールワンマンツアー「エキスパート」札幌公演 感想~ Kの思索(付録と補遺)vol.67~

 

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 JINRO presents 岡崎体育ホールワンマンツアー「エキスパート」札幌公演に参加してきた。僕なりの岡崎体育論を語りたくなってしまうライブであった。「誠実な」ファンとして、真剣な想いを綴って行こうと思う。

 


 さて岡崎体育といえば、次の2曲でバズったと言える。

 

①MUSIC VIDEO

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 MUSIC VIDEOはJ-PopMVあるあるを的確に捉えたまさにMVを語るMVである。やはりとても完成されていて、バズるのも納得である。

 

②感情のピクセル

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 感情のピクセルエモい邦楽バンドにありがちなリフと曲調、展開が楽しく、きちんとカッコいい。ただし、似たようなバンドを馬鹿にしているのではないか、と一部から批判を受けた。しかし馬鹿にしてるはずがないだろう。きちんとした観察眼、すなわちそういうバンドへの愛があって初めて出来る事である。

 


 以上の2曲を見て分かる通り、岡崎体育といえば「ネタ曲」、ともすれば「芸人」「YouTuber」と印象づけられている人がかなりいる。僕もMUSIC VIDEOから彼を知った身だ。だが、次の曲を聴いてもらいたい。

 

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 この曲を聴いた時に、「あぁ、彼の音楽家としてのメロディセンスは本物だ」と確信したのだった。と同時に、彼が本当にやりたいのは、こういう真剣な音楽なのだとも。

 


 では彼は何のためにネタ曲を作るのだろう。それは当然、売れるためである。集客するためである。彼はずっと2020年までに「さいたまスーパーアリーナ」を目指してきた。しかし、これほどの短期間で、さいたまスーパーアリーナライブをするためには、とにかくまずバズる事でファンを獲得しなければならない。そのために彼は怒涛の勢いでネタ曲を作った。セカンドアルバムの半分はネタ曲だった。

 


 しかしもう半分は真剣な曲で構成されていた。やはり真面目な曲で評価されたいという想いだろう。それは音楽家として当然の態度である。これから長く音楽を続けていくためにも、一発屋音楽芸人で終わるわけにはいかないのである。

 


 だが、やはりネタ曲の印象が強い岡崎体育である。真面目なイチ音楽家として、どのように芸人キャラからシフトしていくのかが重要な課題である。ネタ曲でバズった分、ファンの多くはネタ曲を欲しているかもしれない。しかしそれでは、音楽家生命としては決して長く続かない。だがかといって、本気のゴリゴリEDMやバラード曲だけを発信しても、せっかくついてくれたファンが離れてしまうかもしれない。だがそれをやらなければ道はない。

 


 このバランスをどう保つかが非常に難しいところなのである。いかにファンを離さず、芸人的な立ち位置からイチ音楽家としての印象にシフトするのか。

 

 

 今回のJINRO presents 岡崎体育ホールワンマンツアー「エキスパート」は、上記したような岡崎体育の音楽家としての葛藤を強く感じるライブであった。

 


 真剣な曲に対して、真剣な曲であることを予め説明する。

 真剣な曲に対して、少しだけ笑いの要素があるMVを合わせる。

 


 普通のアーティストであれば、こんなことは必要ない。しかし岡崎体育にとってはこれが必要なのである。そうしないと、ライブに来たファンはどっちのノリで行けばいいのか分からないからだ。

 


 加えて、泥をすするようにミュージシャンをやっていた頃の、あまりに未熟な曲を「未熟な曲です」と前置きしてからライブし、そこからポケモンのOP(これは真剣な曲)を流す事で、音楽家としての成長と、自身が本当に実現したい方向性を示すくだりもあった。

 


 このように、岡崎体育は今、自分をシフトさせるためのホールツアーをしているのだと強く感じた。いつもの軽快なトークもあり、まさに芸人さながらの話術で会場を笑わせるシーンもあったし、僕も爆笑していたが、心の底では彼の葛藤が僕にも突きつけられていた。

 


 とはいえ、彼の本心は分からない。心理を汲み取りすぎということもあるかもしれない。だが、僕の拙い岡崎体育アーティスト論が運良く当たっていたと仮定して、このまま話を進めさせていただこう。

 


 そんな彼の葛藤に、ライブ中も心を揺さぶられていた僕は、「では今後、岡崎体育はどんな曲を作っていけば良いのか」という点を否応にも考えた。それは一ファンが気にすることではないかもしれないが、本気のファンとして考えたのだ。

 


 MUSIC VIDEOのようなMVを前提とする曲は、会場が大きくなるにつれ厳しくなるだろう。ファンはMVを見に来たのではなく、生の岡崎体育を見に来たのだ。身振り手振りでMVを再現しても、会場が大きくなるにつれ、ファン目線では岡崎体育が小さくなるので厳しそうだ。

 


 またフレンズのような舞台劇も、ホールでやるのが正直ギリギリなところだ。舞台劇はあくまでも舞台レベルで通用するのである。アリーナでやるには規模感が小さ過ぎる。もしやるのであれば、パレードクラスの仕掛けが必要になるだろう。

 


 感情のピクセルならばアリーナでも通用しそうだ。歌詞がネタ的なだけで、音楽自体はゴリゴリのエモロックだからだ。

 


 つまり、会場が広くなるにつれ、それに適した音楽というものが必要になるのだ。例えば、BUMP OF CHICKENがどんどん宇宙的で壮大な曲をアリーナで披露し、「リトルブレイバー」や「ステージオブザグラウンド」のような泥臭いロックンロールをやらなくなったのは、会場の広さが一つの原因である。曲がそもそも古いだけではない。そもそも過去の曲のスケールが、今彼らの立つ巨大なステージ規模と釣り合わなくなったのだ。

 


 そして現状、岡崎体育のネタ曲の中で、アリーナクラスの曲というのは殆ど無いと考えている。ネタ曲ではさいたまスーパーアリーナは厳しいのである。

 


 この度、悲願のさいたまスーパーアリーナ公演が決まった彼にとって、もうここが、ターニングポイントなのである。サードアルバムのSAITAMAでは真剣な曲がメインとなるとの事だが、それは非常に正しい選択なのだ。

 


 そして僕は今回のライブ中に、彼の音楽家としての正しい方向性を2つ感じた。

 


 1つは、SAITAMAに収録されるThe Abyssという曲である。壮大なスケールをもち、燃えつつも泣きが混ざったゴリゴリEDMであった。それでいて会場がジャンプ出来るのである。フィナーレに相応しい。フィナーレ感は巨大な会場にとても重要である。例えばMr.Childrenの曲に、フィナーレ感が強い曲が多いことを思い出して欲しい。アリーナクラスで一体感を出すために、The Abyssは正に今後の決定的指針となるような曲だと思った。

 


 そしてもう一つは「鴨川等間隔」である。ライブの現場で実感したから分かる。これはアリーナで一体になれるレベルの曲である。観客も楽しいし、岡崎体育本人も「この曲やってる時が一番楽しい」と本音が漏れていた。しかし重要なのはそういうことなのだ。

 


 そもそも鴨川等間隔は岡崎体育のルーツとも言えるような曲である。そしてルーツとなるような曲は、ファンから最も強く愛されやすい曲となるのだ。Mr.Childrenで言えばイノセントワールドであり、BUMP OF CHICKENで言えばガラスのブルースに相当する。同様に、岡崎体育は「鴨川等間隔」なのである。ファンから強く「愛される」曲は、ライブでもファン同士の一体感が凄まじいのだ。

 


 The Abyssと鴨川等間隔。この二つの音楽性の指針は、僕が考える岡崎体育アーティスト論でもっとも強く訴えたい所である。スケール感のあるゴリゴリのEDM。ファンから愛される親しみのある曲。そしてネタ曲からの卒業。

 


 たかが一ファンなのに、あまりに出しゃばった論考であることをお詫びしなければならない。アーティストにはアーティストの想いがある。それを僕はあまりに勝手に汲み取り過ぎてるのかもしれない。だからこの文章全てが間違っているかもしれない。

 


 それでも僕は、是非ともこの文章を岡崎体育本人にも読んでほしいと思っている。だってこれはイチファンの、ライブへの熱い感想であることは間違いないのだ。僕も「私だけの私」という思いでこの文章を書き殴った。

 


 最後になるが、僕はもちろん、さいたまスーパーアリーナには必ず参戦する。そこではフェーズ2に移行した岡崎体育の最高のライブを期待している。

 

END.