Kの思索(付録と補遺)

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頭が良いとは何か?対話篇〜 Kの思索(付録と補遺)vol.85〜

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N「K、私は頭が良くないのです。頭が良くないと、色々と苦労するので、私はもっと頭が良くなりたいのです。私はどうすれば良いでしょうか?」

 

K「ふむ。しかしそもそも、君のいう『頭がいい』というのは、どういうことなのだろうか。頭がいいというのは、色々なことを示すものだ。勉強が出来るとか、難しい数学の問題が解けるとか、記憶力が良いとか、誰も思いつかなかったことを思いついたりとかね。」

 

N「私が指している頭が良いというのは、それら全てのことです。」

 

K「よろしい。では、そこの猫を見てみよう。」

 

N「猫がどうしたのでしょうか?」

 

K「この猫は、人間の絵描きになることができるだろうか?」

 

N「できません。」

 

K「それはどうして?」

 

N「どうして、って猫は猫ですから。」

 

K「では猫は犬になることができるだろうか?」

 

N「できません」

 

K「同様に、何にでもなりうる、というような人もいないのではなかろうか?猫が全てのものになれないように。」

 

N「そのように思えます。」

 

K「では全てを備えている脳、なんでも完璧に出来る頭など、そういう風になりうることもあり得ないことになる。」

 

N「たしかに。」

 

K「しかし君はさっき、頭が良いというのは『その全て』を備えていること言った。しかし今、そういうものがありえないと我々は理解したのだったね。」

 

N「はい。」

 

K「となると、君のいうような『頭の良い人』というのは、存在しないことになる。

 

N「ちょっと待ってください。それはおかしいですよ。だって世間には『あの人は頭が良い』と呼ばれている人達が沢山いるではないですか。」

 

K「私は君のいうような『全てのものを持った頭の良いひとは存在しない』と言っただけだよN。こういうふうに考えてみてはどうだろうか。例えば、医者だ。医者は、どんな医者が良いと呼ばれるのかね?

 

N「それは、患者を治せる医者です。」

 

K「では、どんな漁師が、良い漁師かね?」

 

N「それは、魚を沢山取れる漁師です。」

 

K「同様に、あらゆる職業において、その職業の目的をしっかりと果たすことが出来れば、良いと言われるのではないか。

 

N「そのように思えます。」

 

K「では同様に、頭が良い、と言われるのは、その目的をしっかり果たす頭だということになる。

 

N「はい。しかし、頭の目的とはなんでしょうか?」

 

K「たしかにそこが疑問だ。しかし、君の頭と、君の友達の頭は違うものだね?」

 

N「違います。」

 

K「頭が人によって違う以上、それぞれの頭のもつ目的も違うのではないだろうか?」

 

N「わかりません。そうなのでしょうか。」

 

K「ふむ。では、人は人によって様々な目的を持つことを認めるね?」

 

N「はい。」

 

K「その目的は、思考によって与えられるね?」

 

N「そうです。」

 

K「ところで、目的は人によって異なるのだった。それでは、思考も人によって異なるということになるだろうね。」

 

N「はい。」

 

K「思考を与えるのは頭だね?」

 

N「はい。」

 

K「では、頭は人それぞれ異なり、思考も人それぞれ異なり、目的も人それぞれ異なるが、それぞれがそれぞれに対応した目的を、頭で思考するということになるね。」

 

N「そのように思えます。」

 

K「ここで我々はようやくあの疑問に戻ることが出来た。というのも、頭の目的の話である。我々は今、人はそれぞれに異なった頭を持つために、それぞれに異なった目的を持つことを理解したのだった。」

 

N「はい。」

 

K「しかも、『頭が良い』というのは、頭の目的をしっかり果たすことだと、我々は前に確認したのだった。そしてその頭の目的は、人それぞれに異なると示されたのだった。」

 

N「ということは、どうなるのでしょうか。」

 

K「万人に当てはまるような頭が良いというのは存在しないと確認したね。しかしながら、頭が良いという観念は確実にある。それは何か?という疑問であった。我々が対話したところによれば、それはただ人それぞれが持つ目的、その使命を最もよく真っ当しうる頭脳のことであった。そして我々は結局、そういう人のことを、状況状況に応じて、『頭が良い』と呼んでいるのだ。」

 

N「…わたしの相談は解決したのでしょうか?」

 

K「どうだろうね。君は頭が良くなりたいと悩んでいた。それは頭が良くないと色々と苦労するからだ、と。」

 

N「はい。だから私は頭が良くなりたいのです。」

 

K「となると君の目的は、その色々な苦労からの解放だということだね。」

 

N「そうなります。」

 

K「すると、君のいう『頭が良い』とは、『色々な苦労からの解放』をはたす脳だということになる。これは一体全体、どうすれば良いのだろうね?そしてこれもまた一つの苦労かもしれない。そうだ、まずはこの苦労を解決してごらん。そうすれば目的の一歩目が達成されるということになるのだから。」

 

こう言ってKは去っていった。