Kの思索(付録と補遺)

日々の思索です。Twitterはこちら。https://mobile.twitter.com/k0sisaku インスタ→https://www.instagram.com/yushak_satuei

「恋は雨上がりのように」「万引き家族」を語る!~ Kの思索(付録と補遺)vol.50~

f:id:yushak:20180603190842j:plain



 恋は雨上がりのように

www.youtube.com


 良い映画にはダッシュシーンがある事が多い。ダッシュシーンがあるということはすなわち、キャラクターがそれだけの挙動をするための動因があり、感情が動いていなければならない。だからエモーショナルなシーンになるわけだ。


 「恋は雨上がりのように」もダッシュシーンから始まる。そこに流れる音楽は一見爽やかなように思えるが、少しプログレな感じもして、ロックのニュアンスもある。少し違和感があり、普通ではない。この時点で、単なる量産型の恋愛映画ではないと予感する。


 この映画ではさまざまな「戦い」が描かれる。恋愛映画というよりバトル映画やサスペンス映画のような趣さえある。それがロックの激しさプログレの緊張感のニュアンスなのだろう。


 戦いは自転車で去っていく客に追いつけるかどうかから始まって、バイト先のチャラ男とのデートでの戦いだったり、部活での親友との戦いだったり、自分を憧れる後輩との戦いだったりする。


 そして一貫しているのは、この映画の主人公であり、ヒロインが恋するバイト先の店長との駆け引きというバトルである。そこには「なにを捨てて、何を取りに行くのか」という自分との戦いがある。ここに選択と集中がある。大事なものの片方を「捨てる」ことは勇気がいることであるが、その犠牲が儚く、美しい。


 若い頃には若い頃なりの大切なものや挑戦しなければならないものがある。そこに全力で取り組まなければならないターニングポイントがある。その意味で、この映画のような年齢差のあるマイノリティな恋愛に、若いうちから「酔う」のは、重大な機会損失である。年齢を重ねた店長はこのことを人生をもって痛感している。だから彼は、相手にとって辛いと分かっていても、思いやりのある選択を取るのである。


 年齢を重ねた主人公は、今も小説家になりたいと夢見て原稿用紙に向き合っている。しかし自分ではそれを「未練」だと自虐する。そんな主人公の様子をみた友人は「それは未練ではなく執着だ」と励ます。この映画のラストシーンも「未練」ではなく「執着」といえよう。


 ヒロインが店長に恋心をぶつけるシーンでは常に大雨が降っていた。それは観客である私達に、この恋がどのようなものであるかを暗示していたのだろう。つまり、この恋は雨のようだった。しかし真に重要であることを見定めた、厳しくも優しい選択によって、恋という雨は上がったのである。

 

 万引き家族

www.youtube.com


 樹木希林リリーフランキー安藤サクラ松岡茉優といった、各世代を代表する実力派の演者が、日本の誇る天才「是枝監督」の手によって料理され、カンヌ最高賞パルムドールを受賞した。公開されたら速攻で見に行こうと思っていたが、まさかの先行上映に巡り合い、そのまま鑑賞。凄かった。精神力が根こそぎ持っていかれた。


 同監督作の「そして父になる」でも、いわゆる貧困家庭を描いていて、その描写があまりに理想的すぎると批判があった。万引き家族はその批判に対するアンサーだったように思う。同時に、「そして父になる」で哲学された「家族」とは血の繋がりだけを指すのか?という問いも、万引き家族によってより深く掘り下げられていたように思う。


 個人的にキツかったのは、貧困家庭がより貧困な状況に堕ちていくシステムの描き方だ。生きるために万引きをしなければならない、というのは勿論問題だが、もっと本質的な部分は彼らの「教養のなさ」である。すなわち彼らは、自分の身を守るための手段を「悪事」しか知らない。それ以外の手段を学ぼうと思っても、学ぶ方法が分からない。そして悪事がバレたり、状況が悪化した際に上手く対処する方法が分からない。(ちなみに、教養は「リベラルアーツ」と呼ばれ、本来の意味は「自由の技術」であるというのも皮肉的だ。)


 そしてリリーフランキー演じる父は、「俺に教えられるのは万引きだけ」という。その教養のなさの影響をモロに受け、悪事の矢面に立たされるのは小さな男の子である。この男の子が、この映画のキーパーソンであり、この子から映画が始まるのも納得である。


 しかしこの男の子には、「善悪を自分の頭で考える力」があった。自分の行いについて、子供ながらに自問自答出来る頭脳があった。彼が自らの身体と引き換えに、自分の頭で導き出した正しさを大人たちに証明してみせたのは、クレしんの「大人帝国」を思い出さずにはいられない。


 そしてもう一人のキーパーソンである「虐待を受けていた少女」は、またあの恐ろしい家族の元へ帰ることとなった。しかし少女は、自己犠牲をもって正義を証明した少年から、大切なものを教わった。少女がラストシーンでビー玉を触っているのはそういう暗示だ。彼女の目はもう以前の虐待に怯えた目ではなかった。


 そのようにして、全ては「作られた」、ともすれば偽の家族であったが、それでも尚みんな最後は、かつての作られた家族に視点が向くのだった。是枝監督の描く家族像にはこの優しい視点が共通している。


 ということで、出来る限りネタバレを避けて書いてみましたが、この文章を読むだけなら全く問題ないと思います。実際に映画を観て、この評論をもう一度読み返してもらえると結構おもしろいと思いますよ。

 

 おまけ:お役立ちガジェット

 ルックお風呂の防カビくん煙剤

f:id:yushak:20180603182902j:plain



 

 掃除しても掃除しても生えてくるカビ。実はその原因はお風呂の天井や換気口などに潜むカビである。そこからつねに胞子が降り注ぎ、それが風呂場中を真っ黒にするカビの原因菌となっているのだ。だから、その原因菌を除菌してやれば、お風呂場にカビが生えるのを長期間防ぐことが出来るというわけだ。


 本商品は、カビを除菌するAgの煙を発生させ、風呂の壁、天井、換気口の中まで隅々入り込む。お値段は450円くらいで、一度やれば2ヶ月は防カビ効果が続く。


 この商品の開発にはかなり苦労したらしいし、僕もかなり革命的な商品であると思っているのだが、まだそれほど知名度はないように思える。担当者は「発売したらもっとドカンと売れると思っていた」と語るが、煙を焚くという新しい手法は、健康に問題が出ないか等不安な人も多々いることが予想されるため、その辺りの認識改善を広告で打ち出して行く必要があるだろう。お値段も手頃で、使用方法も簡単なため、これからのお風呂掃除の必須アイテムになっていくと思われる。

 

 END.